吉田労務通信vol.52

最高裁が 2020 年 10 月 13 日に大阪医科薬科大学事件(賞与)、メトロコマース事件(退職金)、10 月 15 日に日本郵政事件(扶養手当をはじめとする手当、休暇)において「同一労働同一賃金」について判決を下しました。
先のハマキョウレックス事件、長澤運輸事件とあわせ、「同一労働同一賃金」の枠組が固まってきたようです。今回は、この事件の主な内容及び企業が対応する上で留意すべきことを取り上げます。


1.最高裁の判決の要旨

1)大阪医科薬科大学事件
職務の難易度や責任の程度、人材育成の観点からの異動状況が異なるのであれば、ある時点において一見、業務内容が同様であっても、不合理と言えない。
判決では、
賞与の趣旨について、「正職員の賃金体系や求められる職務遂行能力及び責任の程度等に照らせば、正職員としての職務を遂行しうる人材の確保やその定着を図るなどの目的から、正職員に対して賞与を支給することとした」と認定した。
職務についてアルバイトは、所属する教授等のスケジュール管理や電話や来客等の対応など「相当に軽易」であるが、正職員は英文学術誌の編集や病理解剖遺族対応、劇物管理など独自の業務があること
正職員は人事異動により教室事務から病院業務担当になることもありえる一方で、アルバイトは原則として業務命令により配置転換されることがないこと
教室事務の過半が簡易作業のため、事務員を正職員からアルバイトに代えてきた経緯やアルバイトから契約社員、正職員への登用制度が設けられていたこと
などを主な判決理由とした。

2)メトロコマース事件
以下の要素を検討し、結論として退職金に関する相違は不合理ではないとした。
売店の販売業務という点では同じだが、休暇や欠勤で不在分を代務するのは正社員のみであること
正社員は配置転換があるが、契約社員Bは勤務場所の変更のみで業務内容が変わることはないこと
売店業務に従事する正社員は関連会社の再編や契約社員Bからの正社員登用であり、他の部署に配置転換することは困難とういう組織再編上の事情があること
契約社員Bから契約社員A、そして正社員への登用制度があり、相当数の登用が実際にあること

補足意見
有期契約労働者がある程度長期間雇用されることを想定して採用されており、比較の対象とされた無期契約労働者との職務の内容等が実質的に異ならないような場合には、両者の間に退職金の支給に係る労働条件の相違を設けることが不合理と認められるものに当たると判断されることはあり得る
退職金制度を持続するためには、原資を用意する必要があり、制度構築に関する企業の裁量は大きい。退職金には、継続的な勤務等に対する功労報償の性格を有する部分が存することが一般的であるので、企業等が、労使交渉を経るなどして、有期契約労働者と無期契約労働者との間における職務の内容等の相違の程度に応じて均衡のとれた処遇を図っていくこと

反対意見
長年の勤務に対する功労報償の性格を有する部分に係る退職金(正社員の4分の1)に相当する額すら有期契約労働者に支給しないことは不合理

3)日本郵政事件
労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても、郵便の業務を担当する正社員と契約社員の労働条件の相違があることについて下記諸手当等について不合理であるとした。

年末年始手当は、正社員が従事した業務の内容やその難易度等に関わらず、所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件にしていること

祝日給は、最繁忙期における労働力の確保の観点から、年始期間における勤務の代償として祝日給を支給する趣旨であること

扶養手当は、継続的な勤務が見込まれる労働者に支給するものとすることは、使用者の経営判断として尊重し得るものと解される。もっとも、その目的に照らせば、契約社員についても扶養親族があり、かつ、相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば、扶養手当を支給することとした趣旨は妥当するというべき

夏期冬期休暇は、有給休暇として所定の期間内に所定の日数を取得することができるものであるところ、時給制契約社員は、夏期冬期休暇は与えられなかったことにより、当該所定の日数につき、本来する必要のなかった勤務をせざるを得なかったものといえるから、上記勤務したことによる財産的損害を受けたものということができる

病気休暇は、継続的な勤務が見込まれる労働者に私傷病による有給の病気休暇を与えるものとすることは、使用者の経営判断として尊重し得るものと解される。もっとも、その目的に照らせば、契約社員についても相応に継続勤務が見込まれるのであれば、私傷病による有給の病気休暇を与えることとした趣旨は妥当するというべき

2.今後、対応する上で留意すべきこと
1)実質的に正社員と同様と問われないように注意
a)どの程度の期間雇用するのか
b)無期転換後は別の雇用形態に
c)職務内容、配置変更範囲について具体的な差異をつける

2)下記 4 つのポイント(要素)に沿った対応と説明
a)業務内容
・業務内容や役割における差異の有無及び程度
・残業時間、休日労働、深夜労働の差
・臨時対応業務などの差
b)責任の範囲
・決裁できる権限及び金額の範囲、管理する部下の人数、職場において求められる
役割、トラブル対応、成果についての責任等
・人事考課
c)配置変更範囲
・業務や職種変更、転勤等の配転、出向、昇降格、人材登用等
d)その他の事情
正社員登用制度の有無及び実績、労使間での交渉状況、従業員への説明状況、経営
状況等

3.まとめ
今回の最高裁の判決が仮にメトロコマース事件の反対意見のように 4 分の1であれ、退職金請求を認めた場合、退職金の時効は 5 年なので、企業の金銭負担は莫大なものになるとともに訴訟ラッシュになり、業績が悪化し倒産する企業も出てくるのではないかと心配しておりました。
以上のような 3 事件を受けて、今までのような日本型雇用(新卒一括採用型、多くが総合職として雇用され、配転を繰返しながら、長期的に人材を育成していく)からジョブ型雇用に移行する中、業務とは、責任とは、人材活用の在り方とは、という根本を検討しなければならなくなりました。
今の時代に合わせた「新たな雇用モデル」を策定する時期だと思います。
何か不明な点や質問等ございましたら、弊社のコンサルタントにお申し付けください。
以上

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