吉田労務通信vol.23

今年の通常国会は、安保法制等に多くの審議時間が割かれ、雇用に関する法案審議等には
時間がかけられなかった結果、ほとんどの法案が先送りになりました。そのような中で成立
した雇用保険法の改正について、今月号では取り上げます。

雇用保険法の一部改正

現下の雇用情勢等を踏まえ、失業等給付に係る保険料率を引き下げるとともに、労働者の離職
の防止や再就職の促進を図るため、育児休業・介護休業の制度の見直しや雇用保険の就職促進給
付の拡充等を行う。さらに、高年齢者の雇用を一層推進するため、65 歳以降に新たに雇用される
者を雇用保険の適用対象とするほか、高年齢者の希望に応じた多様な就業機会の確保を図る等の
措置を講じることとなった。
改正内容:
徴収法関係:2016 年 4 月 1 日施行 雇用保険料率の引き下げ 1.0% → 0.8%

雇用保険法関係:2016 年 8 月 1 日施行 介護休業給付率の引き上げ 賃金の 40% → 67%
育児・介護休業法、雇用保険法、高齢法、男女雇用機会均等法関係:2017 年 1 月 1 日施行
1)仕事と育児の両立支援制度の見直し
改正内容(多様な家族形態・雇用形態に対応した育児期の両立支援制度等の整備)
ア.子の看護休暇の取得単位の柔軟化
現行一日単位での取得であるが、半日(所定労働時間の二分の一)単位の取得を可能とする。
他に
・所定労働時間が 4 時間以下の労働者については適用除外とし、一日単位。
・業務の性質や業務の実施体制に照らして、半日を単位として取得することが困難と認めら
れる労働者は、労使協定により除外できる
・労使協定により、所定労働時間の二分の一以外の「半日」とすることが可能。
(例:午前 3 時間、午後 5 時間など)
イ.有期契約労働者の育児休業の取得要件の緩和
現行の取得要件は、次の通り。
・当該事業主に引き続き雇用された期間が 1 年以上であること
・1 歳以降も雇用継続の見込みがあること
・2 歳までの間に更新されないことが明らかである者は除く
雇用保険法の一部改正
改正後は、次の通り。
・当該事業主に引き続き雇用された期間が 1 年以上であること
・子が 1 歳6か月に達する日までに、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、
更新後のもの)が満了することが明らかである者を除く、とし、取得要件を緩和する
ウ.育児休業等の対象となる子の範囲
現行は、法律上の親子関係である実子・養子であるが、特別養子縁組の監護期間中の子、
養子縁組里親に委託されている子といった法律上の親子関係に準じると言えるような関係
にある子についても対象に追加する。
エ.妊娠・出産・育児休業・介護休業をしながら継続就業しようとする男女労働者の就業環境
の整備
現行は、事業主による不利益取り扱い(就業環境を害することを含む)は禁止。
改正後は、次の通り。
・妊娠・出産・育児休業・介護休業等を理由とする、上司・同僚等による就業環境を害する
行為(いわゆるマタハラ)を防止するため、雇用管理上必要な措置を事業主に義務づける。
・派遣先で就業する派遣労働者については、派遣先も事業主とみなして、前の防止義務を適
用する。また、事業主による育児休業等の取得等を理由とする不利益取り扱いの禁止規定
を派遣先にも適用する。
2)仕事と介護の両立支援制度の見直し
改正内容(介護離職を防止し、仕事と介護の両立を可能とするための制度の整備)
ア.介護休業の分割取得
現行は、原則1回に限り、93日まで取得可能。改正後は、対象家族1人につき通算93日
まで、3回を上限として、介護休業の分割取得を可能とする。
イ.介護休暇の取得単位の柔軟化
現行は、1日単位での取得ですが、改正後は、半日(所定労働時間の二分の一)単位の取得
を可能とする。
ウ.介護のための所定労働時間の短縮措置等(選択的措置義務)
現行は、介護休業と通算して93日の範囲内で取得可能。
改正後は、介護休業とは別に、利用開始から3年の間で2回以上の利用を可能とする。事業
主は以下のうちいずれかの措置を選択して講じなければならない。
(措置内容は現行と同じ)
①所定労働時間の短縮措置(短時間勤務) ②フレックスタイム制度 ③始業・終業時刻の
繰上げ・繰下げ ④労働者が利用する介護サービス費用の助成その他これに準じる制度

エ.介護のための所定外労働の免除
介護終了までの期間について請求することのできる権利として新設。
・当該事業主に引き続き雇用された期間が1年未満の労働者等は、労使協定により除外できる。
・1回の請求につき1月以上1年以内の期間で請求でき、事業の正常な運営を妨げる場合には
事業主は請求を拒否できる
介護休業等の対象家族の範囲拡大(省令事項)
現行は、配偶者、父母、子、配偶者の父母、同居かつ扶養している祖父母、兄弟姉妹および孫
であるが、同居かつ扶養の部分は削除。
*該当部分については、就業規則等の変更が必要になります。夏明け頃を目途に運用を含めて
どのようにするかを検討することをお勧めいたします。秋口になりまと年末調整等の年次の
業務とも重なります。
3)高年齢者の希望に応じた多様な就業機会の確保及び就労環境の整備
65 歳以降に新たに雇用される者を雇用保険の適用対象とする
(保険料徴収は平成 31 年度まで免除)

最後に

厚生労働省から毎月発表になる有効求人倍率が示す通り、日本全国で人員不足の兆候が
表れてきております。このような中で、いかに職場の環境を整備し、従業員の方が、気持ち
良く働いてもらうかということが従業員確保という点からも経営の重要課題になってきて
おります。今、行政が力を入れている長時間労働の是正指導で問題を指摘されないよう
今一度、自社内の労働時間管理等の点検をお勧めします。
一度、人員不足に起因する問題が生じた場合、その改善のためには、多大な時間と費用が
発生します。特に労働時間に関する問題では、多くの企業が長時間労働の改善ができずに
書類送検等されたり、企業名も公表されたりで、さらに人員確保が難しくなっております。
このような状況下では、企業運営にとって致命的なダメージを受ける恐れがあります。

なお、弊社では、雇用管理上、今年のポイントになりそうな次のテーマの勉強会を開催して
おります。ご興味等ございましたら、奮ってご参加ください。
6 月 15 日 まったなし!長時間労働の抑制
7 月 まったなし!非正規雇用に対する対応・社会保険制度の拡大
8 月 まったなし!ストレスチェック
9 月 まったなし!ダイバーシティマネージメント
10 月 まったなし!労働時間の効率化・今後の労働行政の方向性
何か、ご相談やご質問がある場合は、遠慮なく、弊社のコンサルタントにご相談ください。

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